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北陸新幹線「小浜・京都ルート」決定で浮かんだ疑問点。開業時期や建設費、並行在来線はどうなるのか

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北陸新幹線で未着工となっている敦賀以西の延伸について、政府・与党は同県小浜市を経由して京都、新大阪に至る「小浜・京都ルート」を採用する方針を固めました。報道各社が報じています。ただ、開業時期や建設費などは、まだまだ不透明です。現状の疑問点をまとめてみました。

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143kmを43分で結ぶ

北陸新幹線は、現在、高崎~金沢間が開業しており、金沢~敦賀間が2022年度末に開業予定です。敦賀以西のルートについては、新幹線の整備計画に小浜市を経由することが記されているだけで、これまで正式なルート決定は先延ばしにされてきました。

最近になってようやく「小浜・京都ルート」「米原ルート」「舞鶴ルート」の3案に絞られ、近く開催予定の与党整備新幹線建設推進プロジェクトチーム会合を前に、「小浜・京都ルート」に一本化された模様です。

国土交通省が示した試算によりますと、「小浜・京都ルート」は全長140kmを約43分で結びます。途中駅は小浜市内の新駅と、京都駅の2つとみられ、建設費は2兆700億円と試算されています。

2031年の着工を想定しており、建設期間は15年を見込みます。この場合の完成時期は30年後の2046年となります。

北陸新幹線金沢駅

露骨な「我田引鉄」を見せられて

「小浜・京都ルート」は、西日本が発案した、比較的新しいルート案です。2015年8月に初めて報じられた際、当サイトでは、「唐突だけれど最有力」と記しています。新幹線建設が政治的に決められる以上、政治的に優れたルートである「小浜・京都案」が残るのは当然で、予想された結末に落ち着いたといえます。

とはいえ、今回の延伸ルート決定の過程では、政治家による露骨な「我田引鉄」を見せつけられました。新幹線ルートが地元の将来の発展を大きく左右するので、政治家の気持ちもわからなくはないですが、見ていて気持ちのいいものではありませんでした。

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「北回り」か「南回り」か

さて、小浜・京都ルートに決まったとはいえ、北陸新幹線の最終形はまだ見えてきません。最大の難題は、京都~大阪間の建設ルートです。大深度地下で直結するする「北回りルート」と、京都市南部を迂回する「南回りルート」案があり、現時点ではどちらにも決まっていないようです。

大阪と北陸を最短経路で結ぶという考え方にしたがえば、北回りルートが自然です。しかし、そうなると京都~新大阪間の新幹線路線が、東海道新幹線とあわせて「複々線」になってしまい、二重投資との批判がつきまといます。

北回りルートを大深度地下で建設するとなると、この区間だけで数千億円から1兆円の建設費がかかりそうで、「そんなカネがあるなら他の新幹線建設に回せ」との声が巻き起こる可能性もあります。

一方の南回りルートは、京都府南部に駅を作ることで、別線であることを強調することができ、「複々線批判」をかわせます。また、京都府としても、府南部に駅ができることはメリットです。

しかし、北陸と大阪を移動する旅客にしたら、余計な寄り道をさせられるわけで、迷惑な話です。そんな寄り道をしたら、新大阪~京都間は新快速と大差ない所要時間になるかもしれません。

財源はどうする?

建設費の負担も今後の課題です。整備新幹線は鉄道建設・運輸施設整備支援機構が建設し、JRに貸し付けるという形をとります。つまり公共事業です。「小浜・京都ルート」の概算建設費2兆700億円のうち、JR西日本が支払う貸付料を除き、国が3分の2、地方が3分の1を負担します。

しかし、整備新幹線の財源は限られていて、北海道新幹線の新函館北斗~札幌間が完成する2030年度末までは、新たな路線に回す財源が見当たりません。北陸新幹線の金沢~敦賀が開業するのは2022年度末ですが、それから10年近くも延伸工事に着手できないことになります。

新たな財源が確保できなければ、2031年度着工、2046年度開業の見通しとなります。リニア中央新幹線の全線開業予定が2037年ですから、それより9年も遅くなります。

建設国債などを発行すれば、前倒しをすることはできなくもないでしょう。しかし、それをおこなえば「他の新幹線も建設国債で」という声が出てきて、収拾がつかなくなります。

声の大きな政治家は全国各地にいて、北陸新幹線だけを特別扱いする理由は見当たりません。建設国債を発行できるなら、北海道新幹線をさっさと作った方がいい、という主張も出てくるでしょう。

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大阪府、京都府の負担はいくら?

建設費の地元負担分についても、疑問が残ります。整備新幹線の建設費の地元負担分は、これまでのスキームなら、当該路線の通過距離に応じて自治体が支払います。「小浜・京都ルート」では、福井県、京都府、大阪府が負担することになります。

ただ、実際の負担額の試算は、少し複雑です。

たとえば、現在建設中の北陸新幹線について、福井県のホームページでは、財源を以下のように説明しています。

すなわち、 新幹線の建設費は、JRが支払う貸付料を充てた後、国と地方が2対1で負担するとしたうえで、実際には、地方負担分の90%に地方債が充当可能で、その元利償還金の50%~70%に対し国から地方交付税が交付されるということです。

北陸新幹線の現在までの福井県負担対象事業費7800億円のうち、JR貸付料が3900億円と半額を占め、国が2600億円を負担し、残る1300億円が福井県の負担です。しかし、1300億円のうち、地方交付税で700億円が国から措置されるため、実質的な福井県の負担額は600億円になる、ということです。

ずいぶんと地方に都合のいい仕組みに見えますが、このスキームにあてはめれば、「小浜・京都ルート」の延伸部分における各自治体の実質負担額は、それぞれ数百億円程度にとどまる可能性もあります。

とはいえ、大阪府民や京都府民には、大きな負担です。京都府が南ルートを推しているのは、府南部に新駅を作ることで京都府のメリットを増やさなければ、負担の大義名分が立たない、という理由もありそうです。

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湖西線は並行在来線になるか

並行在来線も気になります。「並行在来線」の定義にはっきりしたものはありませんが、新幹線開業で移管される在来線特急が走る路線、というのが一つの解釈です。となると、「サンダーバード」が走っている湖西・北陸線の「山科~近江塩津~敦賀」が該当します。

しかし、小浜・京都ルートでは、新幹線は滋賀県を通りません。にもかかわらず、滋賀県内を走る湖西線を第三セクターに移管するという理屈には無理があります。

滋賀県が受け入れなければ、第三セクター移管はできません。そして滋賀県は、自県の主張する米原ルートが実現しなかったため、湖西線の第三セクター移管を受け入れる理由がありません。したがって、湖西線・北陸線の敦賀以南の第三セクター化は実現不可能と、筆者は予想します。

JR西日本は、地元自治体と協力して、2006年までに敦賀以南の北陸・湖西線の直流化工事を実施しています。その結果、敦賀以南は新快速も乗り入れる近郊電車エリアに入っています。そのため、JR西日本も、敦賀以南の湖西・北陸線の経営移管にこだわらない姿勢に転じるのではないでしょうか。

第三セクター化される可能性があるとすれば、小浜線の小浜~敦賀間だけでしょう。ただ、「サンダーバード」が運転されていない小浜線が、「並行在来線」に該当するかは微妙です。このあたりは、政治的な判断になりそうです。

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北陸・山陽新幹線直通は実現するか

最後の関心事は、北陸新幹線が山陽新幹線に乗り入れるか、という点です。北陸新幹線の新大阪駅が地上駅となるか地下駅となるかは未定ですが、地上に建設されれば、山陽新幹線とレールをつなげることができます。両新幹線が直通運転できれば、車両の運用効率が改善しそうですし、JR西日本としては、中国地方からの新幹線旅客を、自社だけで京都まで運べるようにもなります。

一方で、JR西日本は、ルート決定の過程で、「東海道新幹線と北陸新幹線はシステムが異なり、乗り入れが不可能」と主張して、米原ルートに否定的な姿勢を示してきました。

北陸新幹線が、東海道新幹線と乗り入れできないのだとすれば、東海道新幹線と一体運用されている山陽新幹線にも乗り入れできない理屈です。つまり、JR西日本の主張が事実ならば、北陸新幹線と山陽新幹線は、論理的に乗り入れできないことになります。

が、軌間が同じ両新幹線が乗り入れできない、という主張自体が、やや疑わしい、と筆者は考えます。開業予定の2046年まで、あと30年もあります。30年かけて乗り越えられないほどの技術的問題が、北陸新幹線と東海道・山陽新幹線の間にあるとは思えません。JR西日本のこれまでの主張は、米原ルートを避け、北陸新幹線全線をJR西日本の管轄にするための方便にみえます。

30年後には、現在走行中の車両は全部入れ替わるでしょうから、今から準備すれば、山陽・北陸新幹線は直通運転できるでしょう。そこまで見据えると、新大阪駅は、地上に作られる可能性が高い、と筆者は考えます。

で、開業を見届けられる?

紆余曲折がありましたが、ルート決定は喜ばしいことです。北陸新幹線が2022年度末から20年以上も「敦賀終点」であり続けることについては、どうかと思いますが、将来像が固まれば、対応もしやすいでしょう。

北陸新幹線の敦賀以南の開業が30年後ならば、1973年の整備新幹線決定から、73年の歳月を経て、整備新幹線がフリーゲージ区間を除いて全て開業することになります。絶望的とみられていた時期もあっただけに、関係者は感慨深いでしょう。

残念なことに、筆者には、開業を見届けられる自信が、あまりありませんが。(鎌倉淳)


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