「ひたち」「ときわ」の「定期券用ウィークリー料金券」が謎すぎる件。使い勝手が悪い上に安くない

2015年3月のJRダイヤ改正で、常磐線特急の料金制度が大幅に変更となります。それにともない、「ひたち」「ときわ」用に「定期券用ウィークリー料金券」が登場します。

これは、1週間有効の特急指定席券の5往復分を、定期券の利用者限定で販売するもので、土浦や水戸などから東京方面へ、特急利用で通勤する人向けのチケットです。これまで販売されていた「定期券用月間料金券」が廃止されることに対する代替措置ですが、どういう人を意識して発売しているのかわからない、謎な制度になっています。

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えきねっととの差額は86円

定期券用ウィークリー料金券は、定期券と併用して、1週間の有効期間内に特急列車の指定席を上下各5回ずつ利用できるものです。価格は「石岡~牛久」~「上野~品川」と「勝田~石岡」~「柏」が8,140円、「日立~友部」から「上野~品川」が10,460円となっています。

利用者が多そうな土浦~東京を例に取ると、価格は8,140円。これで5往復(10回乗車)ですので、1回あたり814円となります。いっぽう、同区間の特急料金は通常価格で1,000円。差額は186円にすぎません。さらに、今回のダイヤ改正を機に導入される「えきねっとチケットレスサービス」を利用すると900円。「えきねっとチケットレス」と「ウィークリー料金券」の1回あたり差額は86円しかありません。

また、「えきねっとチケットレスサービス」は、1回の利用につき、「えきねっとポイント」が 30 ポイント(75 円相当)貯まります。これを考慮にすると、差額は11円になってしまい、ほぼ同額といっていいでしょう。

ひたちE657系

使わなかったら払い戻せるの?

ウィークリー料金券の価格と仕組みをみたときに、誰もが疑問に思うのは、「週に祝日があった場合はどうするのか」という点でしょう。あるいは、「会社を休んだらどうするのか」「特急が満席だったら」「特急の終電に乗り遅れたら」「違う場所から直帰したら」などなど、サラリーマンならありがちな事態が起きたときに、使わなかった分を払い戻してくれるのか、尋ねたくなるに違いありません。

JR東日本のプレスリリースには、これに対する答えは一切書かれていません。未利用分を払い戻すならば、利用者に有利な条件ですから、プレスリリースに書かれるのが普通です。何の記述もないということは、使わなかったぶんの払い戻しはないのでしょう。要するに、「7日間のうち5日間きっちり働いて、必ず往復で特急に乗りなさい。それなら、特急券をちょっと割り引いてあげますよ」という、ちょっとうざったい制度にみえます。

月に一度は窓口に並ばなければならない

販売は駅などの窓口のみ。手持ちの定期券を提示した上でなければ購入できず、指定席券売機では買えません。発売は1ヶ月前からなので、継続して利用するには、少なくとも月に1度、窓口に並んで購入する必要があります。

向こう1ヶ月のカレンダーで祝日がない週を確認し、病気で会社を休んだり、終電に乗り遅れたりしないという強い覚悟を持たなければ、買えないチケットです。その割に、割引額は1回あたり百数十円にすぎません。利用者としては、もう少し安く、使い勝手を良くして欲しいと考えるでしょう。

「えきねっとチケットレスサービス」では、最大2ヶ月先までの複数日をまとめて申込みできる「事前受付サービス」が開始されましたので、窓口に並ばないでいいぶん、こちらのほうが使い勝手がよさそうです。

全体として、ウィークリー料金券は、「えきねっとチケットレスサービス」の普及の妨げにならないような使い勝手と割引率になっていて、JRから本気で売ろうという意気込みを感じられません。

政治家を向いて作った割引きっぷ

どうも、JRはウィークリー料金券を当初販売する予定はなかったようです。ところが、定期券用月間料金券の廃止を発表した後、地元自治体が反発し、JRに強く見直しを求めたことから、この制度ができたようです。

これまでの月間料金券の場合、上野~土浦は1ヶ月19,200円でした。月22往復するとして、1回あたり436円です。それが廃止されて、1回あたり通常価格で1,000円になるということで、地元で反発が強まったのです。

茨城県の橋本知事は、12月4日の定例会見で、「JR東日本の水戸支社長にお会いしましたので、この問題について何とか解決策を探して欲しいということを強くお願いしております」と述べた上で、「副知事がJR東日本の実質上の責任者にお願いをしてきた」と付け加えました。

こうした政治の圧力に屈して急遽発売されたのが、ウィークリー料金券のようです。そのため、制度設計が泥縄で、使い勝手の悪い仕組みになったとみられます。

要するに、政治家を見て作った割引きっぷなのでしょう。視点が利用者を向いていないのです。せめて、乗れなかった日に関しては払い戻すなど、利用者が使いたいと思えるような制度設計にしてほしいものです。

JR特急列車年鑑2015

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