JR北海道が、日高線鵡川~様似間の廃止を正式提案。全線開通から78年で運行終了へ

JR北海道が、不通となっている日高線鵡川~様似間について、沿線自治体に廃止を正式に提案しました。JRはこれまでも廃止を示唆していましたが、正式に廃止を表明したのは初めてです。

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約2年間運休続く

JR日高線鵡川~様似間(116.0km)は、2015年1月の高波被害で厚賀~大狩部間の護岸を流出。2016年8月の台風被害で他区間で橋梁を流出するなど、複数箇所で大きな被害を受けています。このため、同区間は、約2年間にわたり運休が続いており、日高線は苫小牧~鵡川間(30.5km)を折り返し運転しています。

JR北海道は復旧作業に手を付けておらず、沿線自治体に対し、鵡川以東の復旧費用が86億円に達するとの試算を提示しました。さらに、復旧後も毎年16.4億円の維持費がかかるとし、その8割強の負担を自治体に求めています。自治体は2016年11月に開かれた会合でこれらの条件を正式に拒否しました。

これを受け、JR北海道の島田修社長は、2016年12月21日に沿線自治体の浦河町に出向き、沿線8町の町長らに対し、廃止の意向を正式に伝えました。

日高本線

年明けにも協議開始へ

協議後の記者会見で、島田社長は、「バス等による代替交通をはじめとした新たな交通体系の確立や、さらなる地域振興の支援等について、できる限りの協力をするべく、協議を進めたい」と述べたうえで、年明けにも協議を開始したい意向を示しました。

一方、新冠町の小竹国昭町長は記者団に対し、今回のJRの判断について「大変厳しい説明だった。きょうの段階では協議することではなく、これから協議を進めることになる」と述べるにとどめています。

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8つの自治体支援策

JRは自治体に対し、バス路線維持のための費用の一部負担や、鉄道施設や用地の無償譲渡など、8つの自治体支援策を提示しました。支援策は以下の通りです。

(1)国・道・町が補助するバス路線への、町負担分の一定程度の支援
(2)列車運行時と同等以上のバス運行便数を確保するための支援
(3)定期差額運賃の一定期間の補填
(4)用地と施設の無償譲渡と、それによる例えばサイクリングロード等での活用
(5)観光送客への支援
(6)JRの所有する社宅の自治体への寄贈または貸与
(7)鉄道公園等の駅舎周辺整備への協力
(8)鉄道用地を活用して行う地域振興のための整備費用の一部補填

「支援」や「協力」という表現がどこまでの範囲を指すのかが不透明ですが、今後の協議によって明確にされるとみられます。

2015年1月8日で運行終了

JR北海道は、2016年11月18日に、同社単独では維持が難しい10路線13線区を公表しました。各路線の沿線自治体との協議を控えた状況下で、巨費を要する日高線の復旧にJRが応じることは不可能です。

復旧費用は沿線自治体がまかなえる額でもなく、復旧できなければ廃止とならざるをえません。結論はとうの昔に見えていたように思えますが、JRが時間をかけて、ようやく明確にした形です。

すでにこの区間には代行バスが走っており、廃止されれば正式にバス転換となります。正式な廃止日は現時点では未定ですが、すでに列車は走っておらず、実質的には、高波被害のあった2015年1月8日を以て運行を終了したことになります。

日高線の全線開通が1937年なので、それから数えると、鵡川~様似間は78年の歴史で幕を閉じそうです。沿線住民も無念でしょうが、北海道の雄大さを感じられる路線だっただけに、旅行者としても残念です。(鎌倉淳)

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