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富良野線に乗ってみて思ったこと。訪日外国人で溢れるローカル線に、道内鉄道の未来を見た

JR北海道の路線存廃問題で、今後焦点となりそうなのが、富良野線です。輸送密度は1477で、JR北海道が「単独で維持できない線区」に分類したなかでは高水準です。

利用者数が多いとは言えないものの、沿線には観光地が点在し、通学や用務需要も存在する路線。富良野線は、今後、北海道の鉄道網再構築で、存続か廃止かで、大きく揺れることが予想されます。

2017年2月下旬の平日に旭川を訪れたのを機会に、乗り直してみました。

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腰を抜かしそうな混雑

2月下旬といえば、北海道観光の閑散期。青春18きっぷシーズンでもないこの時期は、通常、ローカル線は空いています。そう思って、平日の午後、発車時刻間際の旭川駅ホームに上がると、喫驚しました。

単行ディーゼルカーは、文字通り人が溢れんばかりの満員です。東京のラッシュ並み、とまではいきませんが、かなりの混雑。「え?」と腰を抜かしそうになりました。

13時46分の旭川行き。入口付近には地元の高校生と、買い物や通院帰りとおぼしき初老の日本人が詰め込まれています。列車の奥には、スーツケースを持った外国人が、窮屈そうに席に座ったり、吊革に掴まったりしていました。

富良野線

美瑛で大量に下車

列車は満員の乗客を乗せて発車。もちろん、1両編成ですから、満員といっても数十人の乗客です。

地元客は西神楽までの各駅で数人ずつ降車していきます。しかし、多少の乗車もあったので、車内が空くほどではありません。旭川市内を抜けても混雑が続きます。

外国人客がどっと降りたのが美瑛。数十人の降車があり、ホームは活気づきます。車内の立ち客は減りましたが、まだ目立った空席はありません。

上富良野で地元客がまた少し降り、ようやく座れるほどの空席が生まれました。終点富良野まで乗ったのは、十数人で、地元客と外国人客が半々という印象。日本人の鉄道ファンらしき利用者は、筆者以外に1人だけでした。

美瑛駅

なぜ接続しないダイヤなのか

富良野からの折り返しとなる15時42分旭川行きは、発車時点で立ち客がいる程度の混み具合です。富良野口では日中2時間間隔ですので、貴重な夕方の列車だから、ともいえそうですが、ここでも富良野線はそれなりに利用されている、という印象を受けました。

ただ、筆者はそれには乗らず、「根室北線」の滝川行きを待ちます。

15時42分に旭川行きが出た後、15時48分に東鹿越からの普通列車が到着しました。富良野以南から旭川に向かう人は、6分前に列車が出たばかりという状況です。待合室に入って、次の16時55分発まで1時間も待たねばなりません。

運転本数の少ない北海道の鉄道路線で、なぜ普通列車同士が接続しないダイヤになっているのか、不思議でたまりません。これでは、富良野以南から旭川に行く人で、列車を使おうと思う人はいなくなってしまいます。

この接続は、2017年3月ダイヤ改正でも改善されていません。東鹿越が盲腸線状態になっている現状で、富良野着を10分早められない理由があるとは思えません。地元民ならずとも、これではJR北海道に「より一層の経営努力」を求めたくなります。

根室線

滝川行きは空席目立つ

到着した東鹿越発滝川行きに乗り込みます。余命わずかなキハ40型です。ボックスシートが全部埋まり、ロングシートに残り客が座りきれるくらいの混み具合。要するに十数名の客です。

富良野15時50分発。途中、芦別や赤平で多少の乗客がありましたが、とくに混雑することなく、定刻16時55分に滝川に到着しました。乗客の半分以上は、接続する17時02分発の札幌行き「スーパーカムイ34号」のホームに向かっていきました。

筆者は、旭川へ戻ります。しかし、旭川行き「スーパーカムイ」は、3分前に出たばかり。この接続も悪いですが、根室北線から旭川方面へ乗り継ぐ人は少ないでしょうから、やむをえないのでしょう。次の17時22分の「スーパーカムイ27号」で旭川に戻りました。

スーパーカムイ

廃止するにはもったいない

さて、旭川-富良野-滝川-旭川と、道央の三角地帯を一周してきました。印象に残るのは、やはり富良野線の混雑です。混んでいたといっても、1両のディーゼルカーで運びきれる程度ですし、列車は1、2時間に1本しかありません。ですから、バス代替が不可能な輸送量ではありません。

しかし、これだけの外国人観光客が押し寄せる路線を廃止してしまうのは、もったいない、とも感じます。

日本人と違い、外国人は、日本国内の観光にクルマを使う割合が低く、公共交通機関を利用する傾向があります。日本人が外国に行っても、レンタカーよりは公共交通機関を最初の選択肢にする場合が多いのを考えれば、理解できるでしょう。

今後、さらに訪日観光客が増えるのであれば、富良野線の利用者も増える可能性があります。現状は1日せいぜい100人程度とみられますが、訪日客がもっと増え、富良野線をもっと使いやすく魅力的にすれば、1日の外国人利用者を少なくとも数倍に増やせるのではないか、と感じます。

訪日外国人旅行者は、最近ツアー旅行から個人旅行にシフトしてきていますので、それも後押しになるでしょう。

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観光客から「適正な運賃」を

ただ、現状では、訪日客が押し寄せてもお金になりません。そもそもJRは運賃が安いですし、北海道レールパスやジャパンレールパスという格安パスの利用対象になっている限り、利益なき繁忙になってしまいます。

状況を変えるには、観光客から「適正な運賃」を収受するシステムを作る必要があります。「適正な運賃」とは、ローカル線を維持するのに十分な運賃という意味で、一般の鉄道よりは当然、割高になります。

参考になるのはスイスです。たとえば、ツェルマットに向かうMGB鉄道では、44kmの路線の運賃が38スイスフラン(約4,200円)もします。富良野線は全線で54kmありますが、1,070円に過ぎません。

ツェルマットに向かう路線と富良野に向かう路線を同列には語れませんし、車両設備にも違いはあります。それを考慮しても、JRの鉄道運賃は観光地価格としては安すぎるのです。

ツェルマット

外国人も驚く安さ

今回の旅で、富良野駅で、外国人旅行者が札幌までのきっぷを購入している場面に遭遇しました。札幌までの運賃・料金は、滝川から特急利用で4,140円。この価格に、その外国人は「本当にそれでいいの?」と驚いていました。やっぱり、日本の鉄道の価格は安いのでしょう。

とはいえ、たとえば旭川-富良野を4,000円にしてしまったら、地元客には高すぎます。そのため、沿線住民は安く利用できる枠組みを作るべきでしょう。つまり、定価を高くして、「住民割引」を別に設定すればいいのです。

富良野駅

JRの運賃体系から分離を

そのためには、JRの運賃体系から分離する必要があります。価格が安すぎるジャパンレールパスでも乗れないようにしなければなりません。北海道レールパス利用の場合は、適正な分配額で乗車可とするか、住民並みの割引運賃を適用するといった施策でよいでしょう。

上記のMGB鉄道は、ユーレイルパスでは乗れませんが、スイスパスなら乗車可能となっています。

仮に運賃を4倍にすれば、輸送密度が1000程度でも、「単独で維持可能な線区」(輸送密度4000以上)相当の収入は得られるでしょう。

というよりも、輸送密度1000の路線を維持するなら、運賃を4倍にしなければ帳尻が合わないのです。そのうえで、高くても乗ってもらえる仕掛けを考えるほかありません。

そのためには、相応の車両を導入する必要があります。これは行政が用意するしかないでしょう。運賃体系を分離し、新型車両を導入するためには、上下分離や、第三セクター化が必要になりそうです。

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数字以上の差

富良野線は、運賃を高くしても、相応の設備にすれば、訪日客に乗ってもらえるポテンシャルのある路線だと思います。

一方で気になったのは、「根室北線」の富良野-滝川間です。富良野を同じ時間帯に出る旭川行きは混雑していたのに、滝川行きは空席が目立ちました。

1回乗っただけで全てを語ることはできませんが、数字としても、富良野線旭川~富良野間の輸送密度1477に対し、根室線滝川~富良野間は488です。実際に乗った印象では、数字以上の差を感じました。

根室北線

根室北線が廃止されると?

富良野から札幌へ鉄道利用の場合、根室北線経由が一般的です。ただ、現実にはマイカーや高速バス利用者が圧倒的で、根室北線で札幌へ向かう人はかなり少なくなっているようです。

仮に根室北線の滝川~富良野間が廃止されれば、富良野から札幌へ鉄道で行くには、旭川経由になります。

現在のダイヤで、15時50分の滝川行きで富良野を出た場合、札幌には17時55分に着きます。対して、15時42分の富良野線だと札幌に着くのは18時47分です。

旭川経由では1時間近くも余計にかかるわけで、これでは、数少ない利用者がさらに減ってしまうでしょう。もちろん、沿線の芦別や赤平からは鉄道利用ができなくなります。

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「富良野特急」は旭川経由で

観光客で溢れる富良野線に対し、根室北線では、たまたまかもしれませんが、外国人はわずかでした。地元客も少なく、根室北線に関しては、富良野線で感じた「廃止するのがもったいない」という印象は受けませんでした。もちろん、残って欲しいとは思いますが。

仮に根室北線が廃止された場合、札幌-富良野の観光特急をどうするか、という課題が生じます。

これについては、時間がかかっても旭川経由にすればいいでしょう。そのほうが、外国人に人気の美瑛経由になり、使い勝手がよくなるのでは、とすら思います。

富良野駅

「地域で検討」とはいうものの

北海道は、「将来を見据えた北海道の鉄道網のあり方について」という報告書の中で、道内の鉄道路線を6分類しています。

富良野線は、「2 広域観光ルートを形成する路線」と「5 地域の生活を支える路線」に該当しそうです。この2分類に該当する路線は、将来について「地域で検討」が適当とされています。

改めていうまでもありませんが、最終的に、北海道内の鉄道路線をどうするのかを決めるのは北海道民です。地域の発展のために鉄道を残すことに賭けるか、なくても問題ないと判断し撤退するか。難しい判断となるでしょう。

存続に賭ける価値はある

筆者がみた限りでは、訪日外国人客が今後も増えるという前提で、富良野線は運賃を大幅に値上げして車両も一新し、存続に賭ける価値があると思います。観光客をわくわくさせるような新たな車両なら、訪日客を呼び寄せる観光資源にもなるでしょう。

旭川郊外の通学・通院路線の役割も果たしていますし、旭川駅前にできた大規模なショッピングモールのおかげで、買い物客の需要も少しは集められるでしょう。富良野線は、地元客にそれなりに利用されている路線、という点は重要です。

ただ、いまのままのローカル車両を使って低価格の輸送を続けるなら、存続する意味はあまりない、とも思います。それならバスで代替できる輸送量ですし、バスなら駅から離れた観光地へも直結できますから、訪日客もそのほうが便利だからです。

仮に「観光鉄道化」する場合、設備投資には税金を使うことになりますし、営業黒字化も簡単ではないでしょう。それでも、観光振興の経済効果を含めれば、鉄道存続の見返りはありそうです。そこにこそ、道内の鉄道が生き残る未来像があるのではないでしょうか。(鎌倉淳)

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