東急田園都市線ダイヤ改正で誕生した「渋谷駅止まり」は、半蔵門駅で折り返し。なぜ半蔵門線内は回送なのか。

東急田園都市線・東京メトロ半蔵門線が2014年6月21日にダイヤ改正を実施しました。大きな改正があったのは田園都市線で、日中時間帯に毎時2本の準急が誕生、2本の各駅停車が渋谷駅始発・終着に変更になりました。つまり、田園都市線は毎時2本の純増、半蔵門線は運転本数に変更なし、という形です。

このダイヤ改正が発表になったとき、渋谷発着の各駅停車がどうやって折り返すのか、が疑問でした。渋谷駅には折り返しホームも引き上げ線もないからです。これまでも深夜時間帯などに渋谷発着がありましたが、それは到着した2番ホームからそのまま折り返して渡り線を経由して下り本線に出発するという形です。しかし、列車本数の少ない時間帯だからできることであって、日中の列車本数の多い時間帯に、この方式で折り返しを行うのは難しいだろうと推察されました。

実際にダイヤ改正が行われてみると、渋谷発着の列車は、メトロ半蔵門駅まで回送して、半蔵門駅で折り返すことがわかりました。渋谷~半蔵門間は回送運転です。回送区間の運転はメトロ乗務員が担当しています。

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費用負担の問題で「回送」が発生か

では、なぜ渋谷~半蔵門間は回送なのでしょうか。どうせ運転するなら客扱いをすればいいのではないか、と考える人も多いのではないでしょうか。ダイヤ上は、客扱いをしても支障はなさそうです。

この理由について調べてみると、東急とメトロの費用負担の問題に行き当たります。すなわち、メトロは半蔵門線の日中の増発の必要性を感じていないので、増発をしたくない。一方、東急は田園都市線内だけでも増発したい。しかし、日中に渋谷駅で折り返すことはできないので、増発するなら車両を半蔵門駅まで持ってくるしかない。その場合、メトロ区間で営業運転をしたら、メトロが費用負担をしなければならなくなるので、話がまとまらない。ならば、営業運転をしないことで、回送にかかる費用を東急側が負担する。そういうことのようです。

渋谷駅に引き上げ線がないことが、東急田園都市線の輸送改善の障害になってきたことは、利用者の方はよくご存じだと思います。それが、東急側の費用負担によって半蔵門折り返しが実現し、増発に至ったのならば、大きな前進といえるでしょう。この手法を使えば、日中時間帯以外でも、田園都市線のみの増発が可能になります。

一方で、利用者の観点からすれば、「ムダな回送」にも見えます。営業運転をしてもしなくても、どうせ走るならドアを開けてくれればいいのに、と思う人もいるでしょう。たとえば田園都市線から表参道駅までの利用者が、渋谷止まりの列車に乗って、渋谷駅で降ろされて、自分の乗った車両が表参道駅に向けて発車していったら、「表参道まで行くのなら乗せてくれ」と思うに違いありません。

渋谷駅

渋谷駅ホームが降車客で混雑

実際に平日午前中の渋谷駅の様子を見てみました。渋谷止まりの列車が到着すると、案の定、多数の乗客が降車してホームにとどまっています。渋谷止まりの列車は鷺沼から通過待ちなしで先着しているため、ラッシュ時間帯でなくても混んでいます。その旅客がどっと降りて、渋谷駅ホームに滞留するのですから、ただでさえ狭い渋谷駅ホームがさらに混雑しました。

可能なら、桜新町で急行を待避した各駅停車を渋谷止まりにするべきでしょう。しかし、二子玉川以西で急行と準急の運転間隔のバランスを取るために、鷺沼待避の各駅停車が渋谷止まりになったようです。とはいえ、この狭い渋谷駅ホームに大勢が滞留するようなダイヤが優れているとはいえません。どうも、今回のダイヤ改正はよく言えば実験的、悪く言えば見切り発車で行われた感じで、完成度が高くありません。

渋谷駅のホームは狭く、混雑は危険を招きます。せめて、渋谷止まりの列車を、表参道まででも営業運転をしてくれれば、渋谷駅ホームの混雑は解消されると思うのですが、それもできないのでしょうか。

英断なのかムダなのか

半蔵門線内で営業運転をしてもしなくても、発生する費用に大差はないと思われます。ならば、東急側の負担で、半蔵門駅まで営業運転をすればいいのに、と思わなくもありません。しかし、そうすると、メトロが東急に「ただ乗り」してしまうことになります。東急の費用負担で運転する列車の乗客の運賃をメトロが受け取るわけにはいかないという理屈です。その理屈も理解できます。しかし、どうも釈然としません。

それでも、増発を実施した東急の決断は、英断といえば英断です。しかし、ムダといえばムダ。何とも評価しづらい「半蔵門回送」です。

注)当初の記事で、渋谷駅での深夜時間帯などの折り返しについて、半蔵門方の本線上で停止して折り返すと表記していましたが、現状は2番線からの折り返しになっています。お詫びして訂正いたします。本文は訂正済みです。

列車ダイヤと運行管理

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