ANA国際線、アップグレードは入札に。「Bid My Price」の相場はいくら?

SFC会員は特典縮小

ANAは、国際線の欧米・オセアニア路線で、エコノミークラスからプレミアムエコノミークラスへの座席アップグレードを「入札」で決める新サービスを導入しました。「Bid My Price」と称するこのサービス、入札額の相場はいくらくらいになるのでしょうか?

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欧米、オセアニア路線で実施

「Bid My Price」はANAが2018年4月17日に開始した、国際線の新サービスです。エコノミークラスからプレミアムエコノミークラスへアップグレードを希望する旅客を対象にオークション(入札)を実施し、高い値段を提示した人から優先的に座席を提供するものです。

対象となるのは、ANAが運航する日本~アメリカ、ヨーロッパ、オセアニア路線。ただし、当該便のエコノミークラスの旅客全員が、オークションに参加できるわけではありません。

エコノミークラス有償航空券をANAのウェブサイトで購入し、出発7日前にサービスの案内メールが送られた人のみが、入札の権利を得られます。プレミアムエコノミーの空席は限られているので、「Bid My Price」対象となる旅客を絞っているわけです。

Bit My Price
画像:ANAウェブサイトより

出発24時間前までに結果通知

案内メールを受け取った旅客で、アップグレードを希望する人は、フライトごとに定められた金額内で、出発3日前(72時間前)までにオークションに参加し、入札します。

落札した場合は、アップグレード後のeチケットが、出発時刻の24時間前までに送付されます。落札できなかった場合も、出発時刻の24時間前までに結果がメールで通知されます。

アップグレードは、高い入札額を提示した人から順に確定します。入札額が同じ場合、購入した航空券の予約クラス、ANAマイレ-ジクラブの会員ステイタス、入札実行日時の優先順位で、アップグレードを確定します。

アップグレード先のプレミアムエコノミーの座席の事前指定はできません。ただし、出発時刻の24時間前からオンラインチェックインをする場合、座席指定の変更が可能な場合もあります。

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ルフトハンザなどで実施

こうした入札による座席アップグレードサービスは、最近、世界的に急増しています。日本に発着する航空会社に限っても、ルフトハンザ、シンガポール航空やエアカナダなどで実施されています。

ANAの今回のサービスもカナダPlusgradeと提携したもので、ANA独自が開発したものではありません。Plusgradeによりますと、世界48の航空会社が、このシステムを導入しているそうです。

plusgrade
画像:Plusgradeウェブサイトより

案内メールの送付条件は?

さて、ANA「Bid My Price」で気になる点は、大きく2つあるでしょう。「案内メール送付の対象になる条件」と「入札額の相場」です。

まず、案内メール送付の対象になる条件については、「ANAウェブサイトで購入したエコノミークラス有償航空券」で、「旅程開始国が日本、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドのいずれか」とされています。

このことから、パッケージツアーの利用者は対象外であることがわかります。旅行会社を介さずにチケットを購入した個人客だけがオークションに参加できるわけです。

これ以外のことは明らかにされていませんが、予約クラスの高い旅客と、マイレージ上級会員が優先して案内メール送付対象になることは推測できます。どのくらいの予約クラスまでが対象になるかは不明ですが、当該便のプレミアムエコノミーの空席状況によって変動するのでしょう。

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入札額の相場は?

次に、入札額の相場です。「Bid My Price」では、入札額に上限を設けるとしています。この上限金額は変動します。それがいくらかはわかりませんが、プレミアムエコノミーの価格と、案内メール送付対象者の支払ったエコノミークラスの価格の差額が目安になりそうです。

たとえば、東京~ロンドン線の場合、ある平日のプレミアムエコノミーの価格は、以下のようになっています。

E(Value Plus):282,000円
G(Basic Plus):429,000円
G(Full Flex Plus):489,000円

一方、エコノミークラスの同日価格は以下のようになっています。

S(Value):85,000円
W(Value):105,000円
V(Value):137,000円
Q(Value):201,000円
H(Value):236,000円
U(Basic Plus):291,000円
M(Basic Plus):394,000円
B(Flex Plus):444,000円

この場合、プレミアムエコノミーの割引運賃の最低価格282,000円(E)が、一つの基準として考えられます。

メール通知対象のエコノミークラス運賃額をQ以上とした場合、プレミアムクラスEとの差額は81,000円。その片道分として40,500円。切りのいいところで、40,000円を入札上限額の目安と計算できます。エコノミーV以上を対象にした場合は、同じ計算方法で上限70,000円程度でしょうか。

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2~4万円程度?

実際の上限額や、落札額の相場がいくらになるのかはわかりません。ただ、ビジネスクラスではなく、プレミアムエコノミーへのアップグレードですから、片道4万円となると、やや高いかな、というのが筆者の印象です。

まったくのイメージですが、距離の長い欧米線で、2~3万円程度を提示する人が多いのではないか、と思います。

すでに実施されている外国航空会社のオークションの体験談を読んでみても、長距離路線で2~4万円程度が落札の相場のようです。

JALは欧米線で4万円

ちなみに、JALでは、プレミアムエコノミーへのアップグレードを、当日空席がある場合に有償で実施しています。ヨーロッパ、アメリカ線が40,000円、モスクワ線35,000円、オーストラリア線30,000円です。こうした金額も、ANAの落札額の一つの目安となるでしょう。

ANA「Bid My Price」では、落札額が同額の場合、航空券の予約クラス、マイレージ会員ステイタス、入札実行日時の順に優先されます。要するに、お金をたくさん払った人を優先するという姿勢です。とてもすがすがしいですね。

そのため、「2万円」といったキリのいい数字ではなく、「2万1000円」など、少しだけ上に跳ねた数字で入札したほうが、効果的かもしれません。

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上級会員の無償アップグレードは縮小か

「Bid My Price」の導入で、もう一つ気になるのが、ANA上級会員(プラチナ・ダイヤモンド)とSFC会員の「無償アップグレード」の行方でしょうか。現在のルールでは、これらの会員は、当日プレミアムエコノミーに空席があれば、追加料金なくエコノミーからプレミアムエコノミーにアップグレードができます。

しかし、「Bid My Price」が導入されたことで、プレミアムエコノミーの「当日の空席」が減ることが予想されます。そのため、上級会員向けのこの特典が、事実上縮小されることは、ほぼ間違いないと言っていいでしょう。

救いを求めるとすれば、上級会員には、おそらく「オークション案内メール」がもれなく届きそうなことでしょうか。そうなれば、予約クラスにかかわらず入札参加資格が得られることが「上級会員特典」となります。

プレミアムエコノミーに価値はあるか?

ANAの国際線のエコノミークラスは、B777で横10列、B787で横9列と、詰め込み仕様です。私も何度か乗ったことがありますが、正直、狭いです。これに対し、プレミアムエコノミーはB777で横8列、B787で横7列ですから、だいぶ楽になるでしょう。

シートピッチは、B787-8で、エコノミー31インチ(約79cm)、プレミアムエコノミー38インチ(約97cm)ですから、これもだいぶ違います。

一方で、「プレミアム」とはいえエコノミークラスに、どれだけのお金を払うかは、考えどころ。案内メールを受け取った方は、しばし悩むことになるかもしれません。

プレミアムエコノミーは、フルフラットシートのビジネスクラスとは違いますので、あまりに高い金額を支払うのも、もったいない気がします。個人的な感想をいえば、そのときの渡航目的やフライトの時間帯にもよりますが、1~2万円程度なら妥当かな、という印象です。

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本命はビジネスクラス

今回、「Bid My Price」は、エコノミーからプレミアムエコノミーへのアップグレードに対してのみ導入されました。プレミアムエコノミーの座席は少なく、ボーイング777-300ERでも3列24席にすぎません。そのため、サービス対象となる座席も限られた数になるでしょう。

ANAが僅かなプレミアムエコノミー向けだけにオークションシステムを導入したとは考えづらいので、今回は「手始め」と思われます。今後、ビジネスクラスの空席に対しても、「Bid My Price」によるオークションが導入される可能性が高いのではないでしょうか。

むしろ、ANAとしても、旅行者としても、本命はビジネスクラスでしょう。フルフラットシートへのアップグレードとなると、オークション参加の楽しみも、より広がるのではないでしょうか。(鎌倉淳)

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