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阿佐海岸鉄道「DMV」はローカル線活性化の起爆剤になるか。室戸岬を目指して2020年にも運行開始

阿佐海岸鉄道が、線路と道路の両方を走行できる「デュアル・モード・ビークル(DMV)」を、2020年までに導入することを決めました。阿波海南駅~甲浦駅間は線路を走り、そこから道路で室戸岬方面を結ぶ構想です。

DMVの本格的な営業運行は世界初。赤字に悩むローカル線にとって、活性化の起爆剤になるのでしょうか。

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導入協議会が計画を承認

阿佐海岸鉄道は徳島県の海部駅と、高知県の甲浦駅を結ぶ阿佐東線を運行している第三セクター鉄道です。2017年2月3日に、徳島、高知両県など関連自治体でつくる「阿佐東線DMV導入協議会」の会合が徳島市で開かれ、DMV導入計画が承認されました。

DMVは、もともとJR北海道が中心になって開発が進められてきましたが、同社は経営難に陥り導入を断念。一方、徳島県は2012年に、JR北海道の車両を借りて阿佐東線で試験走行するなど導入を検討してきました。

2015年10月には、国土交通省の有識者委員会が、一定の条件下であれば運行に技術的問題はないとの中間報告を公表。これを受け、徳島県は実用化のめどが立ったと判断し、営業運転の計画を詰めるため、沿線自治体と四国運輸局、JR四国による導入協議会を立ち上げていました。

徳島DMV

写真:徳島県

阿波海南~甲浦間はDMV専用に

計画では、DMVの運転区間はJR牟岐線の阿波海南駅から阿佐海岸鉄道阿佐東線の甲浦駅までの10 kmとされています。現在の阿佐東線は海部駅が起点ですが、DMVの運行は隣駅の阿波海南駅からとなります。

阿波海南駅が起点となる理由は、DMVは片側運転台のため、始発・終着駅には車両回転設備が必要になるためです。海部駅は高架駅のため、車両回転設備の設置には多額のコストがかかります。それを削減するため、起点を1つ徳島寄りの阿波海南駅とし、車両が道路と線路を行き来できるような構造にすることで、車両回転を可能にするようです。

阿佐海南DMV

阿波海南~甲浦間は、DMV車両でのみ運行され、JR牟岐線と分離されます。そのため、JR牟岐線の運行上の終点は阿波海南駅になる見込みです。

甲浦駅では、高架線の終点から地上の道路に下りるスロープを新設。そこから道路を通って室戸岬を目指しますが、具体的なルートは未定です。

DMV甲浦駅

地元バス会社に運行委託

DMVを運行するには、鉄道区間では鉄道事業者の免許が、バス区間ではバス事業社免許がそれぞれ必要です。

日本経済新聞2017年2月4日付によりますと、道路区間での運転について、「当面は地元のバス会社に運行を委託し、周遊観光やイベント運行など観光目的で活用する」とのこと。「将来的には阿佐海岸鉄道が許可を取得し、定期路線の運行を検討する」そうです。

車両はマイクロバスをベースに改造したもので、座席数は20~30席程度。開業にあたり3台新造します。日経によりますと、2017年度中に発注して製造をはじめ、2019年度中に試験走行を開始、2020年度の営業運転を目指そうです。

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事業費は10億円程度

事業費は車両調達や駅舎の改築、信号設備等の整備で合計10億円程度。うち徳島県が53%、海陽町が26%、高知県と東洋町が10%ずつ負担します。徳島県では、2017年度一般会計当初予算案に、営業車両の製作費などとして約9700万円を計上する予定です。

阿佐東線の2015年度の輸送密度は1日1kmあたり106人です。地域交通機関としての役割を果たしているといえる数字ではなく、年間の営業収入は913万円にすぎません。サラリーマンが稼げる程度の年収しか得られない会社のために、10億円の投資は過大にも見えます。

「世界唯一」という観光資源

ただ、世界唯一のDMVは観光資源にはなりますし、運行開始後は、徳島から室戸岬方面への新たな観光流動を生むでしょう。

要するに、壮大な乗り物アトラクションが、徳島県東部から室戸岬にかけて運行されるわけです。国内の鉄道ファンはもとより、珍しいもの好きの観光客を海外から呼び込めるかもしれません。なにしろ、世界唯一です。

鉄道事業の投資としては、回収するのは容易ではないでしょう。しかし、地域全体への経済波及効果はありそうです。DMVが赤字ローカル線を活性化する起爆剤になるか。おおいに期待したいところです。(鎌倉淳)

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