ANA国内線運賃リニューアルで、絶対に知っておくべき10のポイント

国内線も355日前発売に

ANAが、2018年秋に国内線運賃制度を大幅にリニューアルします。いわゆる「正規運賃」にも変動価格制を導入し、搭乗日の355日前から予約を受け付けます。また、特典航空券の予約期間も大幅に拡大し、前日予約が可能になります。

ANAの新運賃制度で、知っておくべきポイントをまとめてみました。

広告

1 片道、往復運賃が「フレックス」に

ANAが発表した国内線の新運賃制度の最大のポイントは、「片道運賃」「往復運賃」という、いわゆる正規運賃(ノーマルチケット)の名称とシステムを変更することでしょう。

「片道運賃」「往復運賃」の名称は廃止され、2018年10月28日搭乗分より、「ANA FLEX(ANAフレックス)」となります。

「ANA FLEX」(以下、フレックス)は、空席連動型運賃です。空席状況に応じて運賃額A、B、C、Dの4種類の金額内で変動します。

A、B、C、Dの運賃額にかかわらず、「フレックス」では変更自由、取消手数料不要、当日予約可といった正規運賃のメリットが維持されます。払戻手数料は1区間430円で、これも変更はありません。

ANA787

2 特割、旅割は「バリュー」「スーパーバリュー」に

「特割」「旅割」は、空席連動型の運賃体系はそのままで、それぞれ「ANA VALUE(ANAバリュー)」、「ANA SUPER VALUE(ANAスーパーバリュー)」という名称に生まれ変わります。

普通席では、「バリュー」「スーパーバリュー」として、予約期限にあわせて、1、3、21、28、45、55、75の5タイプが設定されます。3日前以降が「バリュー」で、21日前以前が「スーパーバリュー」です。さらにセール運賃として「スーパーバリューセール」が期間限定で設けられます。

プレミアムクラスでは、3日前まで予約の「バリュープレミアム3」と、28日前まで予約の「スーパーバリュープレミアム28」が設定されます。

これらは、「特割」「旅割」「プレミアム特割」「プレミアム旅割28」から名前を変えただけで、運賃制度としてはこれまでと同じです。

取消手数料は、55日前までは無料、以下、45日前まで30%、28日前まで40%、14日前まで50%、出発時刻まで60%と値上がりしていきます。

広告

3 航空券の販売開始日は355日前に

まとめると、これからは、ANAの運賃は「ANAフレックス」「ANAバリュー」「ANAスーパーバリュー」の3種類になるわけです。

制度変更の理由として、ANAは、「3つのラインナップは、運賃体系のグローバルスタンダードにも対応しており、増加する海外からのお客様にもよりご利用いただきやすくなります」としています。つまり、訪日客を意識したネーミング、制度変更であることを示唆しています。

新運賃制度では、予約・販売期間を前倒しし、355日前がチケット販売開始日となります。ただし、355日前から販売するのは、「フレックス」系運賃のみです。これまで「片道運賃」「往復運賃」は2カ月前の発売でしたので、一気に発売時期が10カ月も前倒しされるわけです。

「バリュー」「スーパーバリュー」といった「バリュー」系運賃は、これまで通り運航ダイヤ期間発表後に、一斉発売となります。目安として、夏ダイヤは1月下旬頃、冬ダイヤは8月下旬頃の発売開始です。

ここで、新運賃制度の概略を表にまとめておきましょう。

旧名称 新名称 予約開始 予約変更 取消手数料 払戻手数料 空席待ち
片道/往復運賃 FLEX 355日前 なし 430円
特割 VALUE 1月、8月 × 5% 430円
旅割 SUPER VALUE 1月、8月 × 30-60% 430円 ×

4 「早く買えば、安い」とは限らない

今回の制度変更で大きなポイントは予約・販売期間の拡大ですが、利用者が気をつけなければならない点があります。それは、「早く買えば、安い」という、これまでの大手エアラインの航空券価格の常識が通用しなくなる点です。

新制度では、高いチケットである「フレックス」が先に発売され、その後、安いチケットである「バリュー」系の発売が開始されます。つまり、最も早く発売される「フレックス」が、最も高い運賃区分なのです。

これは必ずしも改悪ではありません。「高くてもいいので、チケットを確保しておきたい」という方には、朗報といえます。

特に、GW、お盆、年末年始といった繁忙期では、「定価でいいから席を確保しておきたい」という人は少なくないでしょう。そうした人には新運賃制度は使いやすくなります。

一方で、先行販売された「フレックス」の売れ行きが好調なら、「バリュー」系の販売開始時点の残席が少なくなる可能性があります。となると、安いチケットの販売数が限定されることになり、路線によっては、繁忙期に格安チケットを入手しにくくなるかもしれません。

ちなみに、「フレックス」では、「B~D」の運賃額で座席数制限があります。座席数の制限がなく買えるのは、「フレックス A」のみで、繁忙期は「A」の枠が広くなるとみられます。

広告

5 変更可能な運賃が安く買えることも

さて、下表は、ANAが公表した新運賃制度の価格イメージです。

ANA新運賃
画像:ANAプレスリリース

気づくのは、「フレックス」の最安値は、「バリュー」の最高値より安い、ということです。これは、「フレックス」であっても、運賃額クラスがCやDなら、それなりに割引されるということを意味します。

その割引率がどのくらいなのかは定かでありませんが、現行の「特割1」くらいの割引が、「フレックス」でも行われることになりそうです。路線によりますが、20%引きくらいは行われると予想します。

フレックスは変更・取消自由という柔軟性の高いチケットです。そうしたノーマル的なチケットが、早い時期なら安く購入できるようになる、ということです。

6 株主優待運賃価格は下がる?

株主優待割引運賃に関しても、変更があります。

これまでは、株主優待運賃の値段は、片道運賃の50%割引でしたが、片道運賃が廃止となるため、「フレックス」運賃の最安値である「フレックスD 運賃」の 50%割引となります。

フレックスD の価格が、現行の片道運賃より高くなることは考えづらいので、おそらく、株主優待運賃の価格は、これまでよりも下がるのではないでしょうか。

株主優待割引は、「フレックス」系運賃なので、355日前の販売開始です。そのため、最も早く販売される格安チケットとなります。約1年前に、変更・取消可能な50%引きのチケットが買えるわけですから、便利になることは間違いありません。

広告

7 株主優待運賃に販売座席制限

これだけなら朗報なのですが、一方で、株主優待運賃での販売座席数の制限が厳しくなります。

これまで、ANAは特定期間の一部の便においてのみ、株主優待割引の販売座席数に制限をかけていましたが、新制度では「年間を通じて各便の混雑状況により販売座席数の制限を設定」するとしています。

気になるのは、座席数制限がどの程度になるかでしょう。

それは定かではありませんが、座席数制限が厳しければ、株主優待割引を使う機会が減りかねず、株主優待券の価値も下がりかねません。

株主優待券の価値低下は、株価下落に繋がりますので、ANAとしても、あまりに露骨なことはしないとは思いますが、株主優待割引の座席制限が、どの程度で運用されるかは注目したいところです。

8 特典航空券は前日予約OKに

特典航空券の扱いにも変更があります。大きな変更ポイントは、前日予約が可能になる点です。

これまでのANA特典航空券は、「4日前まで予約可能」で、3日前以降の直前予約ができませんでした。それが、特典用座席に空席があれば前日まで予約可になるわけです。「思い立ったらマイルを使って旅に出る」ことが可能になり、特典航空券の使い勝手は向上しそうです。

予約変更も前日までOKとなります。そのため、急用が入った場合に、変更しやすくなります。

9 特典航空券の有効期間が1年間に

特典航空券の有効期間は、1年間に延長されます。これまでは90日間だったので、大幅な改善です。

「前日まで予約可」と「有効期間1年間」というルール変更により、特典航空券予約をしたものの、用ができて乗れなくなった、といったことが減るでしょう。

さらに、特典航空券の予約開始日は、これまでの「2ヶ月前」から、「年2回の一斉発売と同時」に変更になります。つまり、これまでは「正規運賃」と同じタイミングでの予約開始だったのが、今後は「バリュー」系と同時期の発売開始になるわけです。

早くから旅程を決めたい人には使い勝手は向上しそうですが、一斉予約になるため、予約開始日の座席争奪戦は激しくなるかもしれません。

10 当日前便への変更不可に

一方で、特典航空券の「当日空港での前便への変更」が不可となりました。これは改悪と表現できます。

これまでは、特典航空券を利用する際に、遅めの便を予約しておくことが一つのテクニックでした。当日、空港に早めに着いた場合、早い時間の空席便に変更すれば良かったのですが、今後はそうした旅行法はできなくなります。

広告

まとめてみると

まとめてみると、ANAの新運賃制度は、これまでの「国内航空運賃の基本ルール」を大幅に変更するものといえます。

制度変更の背景としては、LCCなどで2カ月以上前のチケット販売が定着していることがあげられそうです。また、正規運賃で購入する人がほとんどいない、という現実に即した、ノーマルチケット改革とも受け取れます。

予約期間を拡大する一方で「高い→安い→高い」という順に航空券を販売することで、航空券の平均販売価格は上昇しそうです。ただ、競争もありますので、実際にどの程度の価格変動が起こるのかは、なんともいえません。

新運賃区分や特定航空券のルール変更などは、2018年10月28日搭乗分より適用されます。予約・販売期間の拡大は、2018年9月3日予約分より実施されます。路線別の運賃などの、新運賃の詳細は2018年5月末に公表されます。(鎌倉淳)

広告
前の記事シベリアへの航空路線が拡大中。意外と近い東ロシアの旅はいかが?
次の記事東急大井町・田園都市線「有料座席指定車」導入の背景を考える