JTBが大幅減益、KNTは純損失、H.I.S.は好調。大手旅行会社の決算で、明暗わける

旅行会社最大手のJTBが発表した2017年3月期の連結決算は減収減益で、最終利益は前期比58%減の52億円となりました。同じく大手のKNTは特別損失を計上して最終赤字となっています。一方、H.I.S.は2017年10月期を増収増益と予想。大手旅行会社の決算で明暗が分かれました。

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JTBはエース、ルックとも不振

JTBの2017年3月期の連結決算は、売上高が前年比3.5%減の1兆2965億円、営業利益が37.0%減の101億円、経常利益が42.0%減の129億円、当期純利益が58.4%減の52億円で、減収減益となりました。

減収減益の最大の理由は、個人旅行事業の不振です。パッケージツアーの有名ブランドである国内旅行のエースJTBが4.8%減、海外旅行のルックJTBが5.5%減と振るいませんでした。旅物語を主力とするメディア事業も、国内旅行16.2%減、海外旅行17.5%減と大幅減です。

2018年3月期の業績見通しは、売上高が6.4%増の1兆3800億円、営業利益が11.8%減の90億円、経常利益が23.1%減の100億円、純利益が15.4%減の44億円としています。増収ながら減益を予想しているのは、積極的な投資を行うことが理由だそうです。

JTB2017年決算

KNTはソフトウェア投資で減損

近畿日本ツーリストやクラブツーリズムなどを傘下に置くKNT-CTホールディングスは、2017年3月期連結決算で最終赤字となりました。

売上高は3960億円で、29億円の営業利益を確保したものの、個人旅行事業に使用しているソフトウェアへの投資が同事業の低迷によって回収困難と判断し減損処理を実施、38億円の特別損失を計上しました。これにより当期純利益が13億円のマイナスとなり、最終赤字となりました。

KNT2017決算

KNTでは、今後、分社化により地域や専門分野に応じた営業体制を確立し、意思決定の迅速化を図ることで持続的な成長を果たすとしています。2018年3月期の連結決算予想は、売上高が前期比4.3%増の4130億円、営業利益が14.5%増の34億円、最終利益が17億円を見込んでいます。

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H.I.S.は海外旅行で5年ぶり首位に

一方、海外旅行を主力とするH.I.S.は好調です。2017年10月期第2四半期(2016年11月1日~2017年4月30日)の連結業績は、売上高が前期比6.2%増の2718億円となりました。

通期予想では、売上高11%増の5800億円を見込みます。営業利益は40%増の200億円、経常利益は166%増の230億円、当期純利益は4493%増の120億円を想定しており、熊本地震の影響などで落ち込んだ前期から大きく回復しそうです。

HIS2017上半期決算

H.I.S.では、主力の海外旅行事業が堅調で、第二四半期での送客数は前年同期比5.3%に伸びたとしています。「ナンバーワン・オンリーワンのコンテンツを打ち出した商品展開を行った結果」としています。

日本発の海外旅行取扱額で2017年2月にJTBを抜いて旅行業界で首位に躍り出て、話題にもなりました。グループ全体では依然としてJTBのほうが取り扱い規模は大きいものの、H.I.S.の首位は東日本大震災が起きた2011年3月以来ですので、最近の勢いはH.I.S.に分があるようです。

H.I.S.は、第2の柱であるハウステンボス事業に続き、「変なホテル」ブランドのホテル事業を「第3の柱」として力を入れています。ホテルの客室不足が深刻な東京・大阪・京都などの国内や、アジア人が好む旅行先を中心とした海外で、今後、ホテル展開の検討や準備を進めるとしています。

大事なのは商品力?

JTBとKNTは、個人旅行事業で苦戦している様子がうかがえる決算となりました。その理由として、オンライン旅行予約の充実があります。

最近の個人旅行者は、インターネットで飛行機やホテルを直接予約をしたり、オンライン専業型の旅行会社を使ったりする傾向が強まっています。そうした環境の変化が、既存の旅行会社の経営に影響しているようです。

一方で、H.I.S.は、旅行事業の好調の要因を旅行商品の企画力に求めています。もともとH.I.S.は、JTBやKNTに比べてネット販売に強い、という背景もありそうですが、なにより大事なのは、やっぱり商品力、ということなのでしょうか。(鎌倉淳)

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