フランスと京都で感じた「やっぱり新幹線は快適」。飛行機にも高速バスにも負けない高速鉄道の早急な整備を

日頃使い慣れている新幹線。旅情もないし、高いし、今さら乗っても面白くないし、ということで、旅行者には人気がありません。最近は高速バスや飛行機を利用する人も多いのではないでしょうか。

筆者は、この4月から5月にかけて、南フランス、京都と取材旅行に出かけました。南フランスにはパリからTGVを、京都には品川から新幹線を利用したのですが、そこで、新幹線について改めて考えさせられる機会を得ました。

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TGV vs. 新幹線

TGVは、シャルルドゴール空港からアヴィニョンまで約650kmを3時間11分で走ります。価格は変動制ですが、2等車で110ユーロ、1等車で150ユーロくらいが平均的なようです。筆者はフランスレイルパスを利用しましたが、概算で1等車が1万円程度でした。

TGVに乗るのは初めてではありませんが、以前、2等車に乗ってとても狭かった記憶があります。そのため今回は1等車を選んだのですが、やはり窮屈。シートピッチは新幹線の普通車より狭いと思われます。座席幅はそれなりに広いですが、リクライニング角度も緩く、新幹線のグリーン車には遠く及びません。車内の清掃も甘く、ゴミや汚れが目立ちます。

車内販売はありませんが、カフェはあります。いれたてのコーヒーとサンドイッチはまずまず美味しく、これはTGVに軍配が上がるでしょう。

avignonTGV

無情な駅員

アヴィニョンでは、ご婦人が複数の荷物を下ろしている途中に、駅員が出発合図をして、ドアを閉めてしまいました。荷物が車内に取り残されてしまったようで、ご婦人はドアに挟まらんばかりにして抵抗しましたが、むなしくドアは閉まってしまいます。目の前にいる駅員にドアを開くよう訴えますが、駅員は無情にも出発合図。TGVは発車していきました。同様のことが日本で起きたら、いったんドアを開てくれると思いますが、いかがでしょうか。

TGVはドアの数が少なく、乗り降りに時間がかかりやすい、という点が、こうしたことが起こる背景にありそうです。ちなみに、駅員はまったく悪びれず、ご婦人に「インフォメーションに行ってください」と伝えるのみ。日本のJR職員は腰が低すぎると思いますが、フランス国鉄職員のこの態度もどうかと考えます。

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TGVの1等車より快適

さて、帰国して、今度は品川から京都まで新幹線を利用しました。距離は約500km、2時間14分です。車内に一足踏み入れると、その「きれいさ」に改めて驚きます。そして足元はゆったり。普通車なのに、TGVの1等車のリクライニングより角度は深く倒れます。贔屓目かもしれませんが、TGVの1等車よりも新幹線の普通車のほうが快適です。

料金は13,520円。TGVの変動運賃の最安値よりは高いですが、最高値よりは安いです。距離も運賃制度も違うので単純比較は難しいですが、日仏高速鉄道の運賃水準はそれほど変わらないように思えます。

のぞみ

飛行機vs.新幹線

TGVとの比較はここまでにして、今度は飛行機と比べましょう。何よりも感じたのは、「断然ラク」ということ。最近は飛行機に乗ることが多く、羽田や成田まで赴いて、伊丹やら関西やら新千歳やらに降りるのですが、それに比べると品川駅から乗って、京都駅で降りることがいかにラクか。

空港まで京急や京成に乗る必要もありませんし、空港での手続きも荷物検査もありませんし、客室での気圧変化もありませんから、新幹線は飛行機に比べると全体的な疲労度が圧倒的に低いです。機内の気圧変化など若い頃は全く気にならなかったのですが、最近は若干身体にきます。それが新幹線にはまったくないので、疲労感が薄いのです。

価格を追求するなら、LCCのほうが安いでしょう。しかし、新幹線も目が飛び出るような高額ではありませんし、空港に行く手間や飛行機の疲労を考えると、価格でのアドバンテージはそれほど高くないように思えます。

高速バスvs.新幹線

価格と手間の少なさを重視するなら高速バスという選択肢もあります。たとえばJRの昼特急の場合、京都駅を8時30分に出て、池尻大橋に15時45分に着きます。価格は6,000円ですが、これだと丸一日潰れてしまいます。

新幹線なら16時に京都を出ても18時半には品川です。京都で3時のおやつを食べて、都内の自宅で夕食を取れるわけです。この時間差は、少々の価格差では埋め切れません。夜行バスなら時間を有効に使えますが、今度は体力と忍耐力を必要とします。

高速鉄道網は必要

ここまで、至極当たり前のことを書いてきてしまったかもしれません。読んでくださった方には申し訳ありません。結論として、新幹線は価格と速度と快適性で、とても合理的な乗り物であると再認識しました。特急「あずさ」で感じたような鉄道の危機は、新幹線では感じられません。

この合理的な乗り物の建設が滞っていることは残念です。整備新幹線の建設に多くの問題点があることは理解しますが、旅行者の立場では、やはり高速鉄道は早く整備してほしいもの。

さらにいえば、鉄道という乗り物を次世代に残していくには、やはり在来線ではなく高速鉄道網が必要なのではないか、と思わずにはいられません。

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